Kids CanvasEQ・IQを伸ばす育児の知恵と幼児教育
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      『おとうさん』  3歳児



     父の日を前にお父さんの仕事について尋ねてみる。
     すると、

     「大きなビルで働いてるの」

     「学校に行ってる」

     「車のお仕事」

     「コンピューターしてるよ」


     などなどよく理解している子ども達。


     そこで、お父さんが仕事に行かなかったり、
     仕事をしなかったりするとどう思うか尋ねてみる。

     すると、


     「会社の人に怒られるよ」

     「学校の人に叱られる」


     とのこたえ。


     「でも、ぼく、お父さんが会社に行かなくても泣かないよ」

     と言う子もいた・・・。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


     この、

     「でも、ぼく、お父さんが会社に行かなくても泣かないよ」

     ということばをどう受けとめられますか?



     お父さんが仕事に行かなかったり、仕事をしなかったら・・・?

     毎日おいしく食べているごはんや、いろんなもは、
     お父さんが仕事を頑張ることでお金をもらって、
     そのお金で買うことができているということ、

     そのお父さんに対して感謝の気持ちを持つことというのは、
     おとなが思い描いている‘ありがとう’です。



     5才くらいになれば、子どももそんなこたえをします。


     が、実際、3才の子ども達には・・・、

     「お父さん、ありがとう」


     という気持ちを引き出すには、この問いかけは空振り?

     なんて、思われますか?



     いいえ、決して空振りだなんて思わないでくださいね。

     「でも、ぼく、お父さんが会社に行かなくても泣かないよ」

     のことばには、とても子どもらしい優しい心が
     込められているんです。

     「でも」ということばは、その前の

     「会社の人に怒られる」に対しての、「でも」です。


     子どもは、お父さんが会社の人に怒られるその気持ちを、
     自分が怒られていることとして、話したのです。

     お父さんの気持ちを自分の気持ちとして話したのです。


     3才という年齢は、
     たとえばお父さんごっこをして、お父さん役の子どもに

     「プレゼントは何がいい?」

     と尋ねると、

     「仮面ライダー」

     と答える時期です。自己中心性という時期ですね。

     これが5才のお父さんごっこのお父さんであれば、

     「ネクタイ」

     と答えるようになります。



     もちろん、自己中心性からの成長は、
     自分とは違うであろう人の気持ちに立って物事を
     考えられるということですが、

     それなら、3才という自己中心性の真っ只中の時期
     人の立場に立って考えられないから、
     身勝手な優しくない時期かというとそうではなくて、

     人の気持ちは自分の気持ちと同じだと思っている
     時期
なのです。

     だから、3才のお父さんは、仮面ライダーが欲しいと
     思うのです。


     自分が楽しいと人も楽しいと思うし、
     自分が泣きそうと思えば人も泣きそうと思うし、

     だから、

     「でも、ぼく、お父さんが会社に行かなくても泣かないよ」

     というのは、

     「お父さんが、会社の人に怒られても泣かないよ」

     「ぼくは、会社の人に怒られても泣かないよ」

     に通じるのです。


     友達が転んで、血が出ているのを見ると、
     自分が転んだかのように顔をしかめて痛そうにする子ども、

     そしてそのときも、

     「ぼく、血が出ても泣かないよ」

     ということばが聞かれます。

     それはもちろん、自分が強いということをわかってほしい
     という気持ちでもありますが、

     また、ケガをした友達の気持ちを自分の気持ちとして発した
     ことばでもあります。



     まだまだ、3才の子どもにはおとなが意図するような、
     お父さんへの感謝の気持ちというのは難しいです。

     が、子どもは子どものその時の自分の思いのたけで
     一生懸命考えてことばを発します。

     おとなの意図とは違うことばではありますが、
     だからといって、

     無理やり意図する方向に持っていくのではなくて、
     そのことばを受けとめてあげてくださいね。

     とても心あることばなのですから。


     そして、
     「でも、ぼく、お父さんが会社に行かなくても泣かないよ」

     ということばを受けたら、

     「○○くんは強いね」

     「お母さんだったら泣いちゃうかも」

     「お母さんが代わりに仕事をしなくちゃね」

     (主婦と主夫の交代)

     などなどいろんな柔軟なことばがけで、
     また新しく返す子どものいろんなことばを受けとめて
     みてください。


     この質問にはこの答えが正解ということはありません

     その正解というのは、
     本当におとな(親)に都合がいい思い込みと、
     固定した概念にしばられているものです。

     そんな受け取り方は、子どもの発想をパターン化して
     しまいます。

     柔軟に柔軟にその年齢その年齢の子どものありのままの
     ことば、姿をしっかり受けとめてあげて下さい。

     そして、年齢にかかわらず、可能ならお父さんの
     働いている姿に接する機会があればどんどんその機会を
     つくりましょう。


     それが難しい時は折に触れてお父さんの仕事、
     他のいろんな働く人のことについて話をしてみてください。


     ごっこ遊びの相手役になって、いろんなことばを
     聞きだしてみるのも

     ‘考える力’につながりますよ。

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